新橋と昭和をこよなく愛する元会社員の夢の空間

 勤めていた会社が新橋にあり、鈴木さんの言葉によれば、「毎日のように新橋で飲んだくれていた」。社名の通り大好きな街」だからである。定年退職を機に起業、事業の一つとして始めたのが、この昭和ブックカフェだった。「昭和に出た本、昭和のことを書いた本などを並べています。ジャンルとしては、マンガ、写真集、戦記物、歴史関係、報道、文化関係が多いと思います」 それらを求めて約70平方㍍の広いスペース(店内)に客が集まってくる。「さまざまなお客さまがいらっしゃいます。昭和の本が好きな人、店内の雰囲気が好きな人もいます。中には商談している人もいますよ」と鈴木さんは笑った。

お気に入りの不二子ちゃ〜ん(峰不二子)の絵皿を手にご満悦の鈴木さん。

 店名に漂う不思議な感じに戸惑いすら覚える。「昭和」も「ブックカフェ」も聞き慣れた文言ではあるが、一緒になった時点で強烈な個性のある、斬新なフレーズになるのだ。「もちろん、『◯◯カフェ』というのはたくさんあります。ネットでも調べましたが、この屋号は見つかりませんでした」

昭和に一世を風靡(ふうび)した「キャンディ♡キャンデ
ィ」(主題歌レコード、上)と「ベルサイユのばら」の資
料。好きな人にとっては、絵を見ただけで涙が出るかも

 カフェの中をぐるっと回ると、当たり前のことに気が付かされる。昭和に出版された本は、「古書」ではないということだ。明治や大正に出版されたいかにも古めかしい本と比べて明らかに現代的なのだ。昭和という時代には、新しいモノがどんどん世に生まれた。本も同様だ。そんな世相を背景に作られた本を読めるのが昭和ブックカフェの神髄である。広いスペースの半分を占める書庫。スペースがゆったりととってあるので探しやすい