格式あるアカデミックな空間で非日常を味わう

 学士会会員を迎えるエントランスも格調を備えている。幅の広い階段、天井には松笠などの落ち着いた植物をモチーフにしたモールディング(帯状の装飾)が、学士たちをはじめ客を迎える。黄金色の真ちゅう製のドアノブは、今でも毎日磨き上げられている。

旧館入り口の真ちゅう製の取手。凸凹の細
部まで毎日スタッフが磨き上げる。取り付
けて100年近く経ってるとは思えない輝きだ 

 2階には大きな部屋が並ぶ。エレベータを降りると、ロマネスク風のアーチが目に飛び込んでくる。201号室前のロビーだ。ここを抜けて小編成のオーケストラが演奏できるバルコニーがついたメインバンケットルーム(201号室)へ。華やかさと荘厳さを兼ね備えた大きなパーティや披露宴用の部屋は、見学するだけでも、その存在感に圧倒される。テレビドラマ「半沢直樹」で、大和田常務(香川照之)が半沢直樹(堺雅人)に土下座をさせられるシーンの撮影が行われた部屋である。

学士会館の中でも一番人気の「201号室」。小さなバルコニーが備えてあり小編成での演奏が披露されることも

 建設当時の姿がよく残っている部屋でもある。西洋建築でもポピュラーな建築装飾のモチーフであるアカンサスの葉の装飾が美しい。石こうで作られたコーベル(壁などから突き出した石などの建造物)が規則正しく並ぶ。日差しもたっぷりと入る気持ちの良い部屋である。「学士会館の価値は、完成当時の建物がいまだに残っていて、実際に利用できることだと思います。生きた建物としていまだに使えて営業もしている。レストランやバーで飲食ができるし、結婚式や宴会なども行える。そこに意義があるんです」

ホーレス・ウィルソン氏が第一大学区第一番中学(翌
年に開成学校、後の東京大学)での授業の傍らこの地
 で野球を教えた。「日本野球発祥の地」のモニュメ

ト。同氏の野球殿堂入りを記念して敷地内に建立された

 庄司さんは目を輝かせながら続けた。「私どもは、歴史的な建物を多くの先輩方から引き継ぎ守ってまいりました。これからもしっかり残していきたいと考えています。総支配人も『学士会館は、非日常の場として利用してもらいたい』と常々申しております」

 庄司さんの言葉には、誇りと自信が満ちあふれていた。

がくしかいかん
東京都千代田区神田錦町3-28
📞03-3292-5936

文・今村博幸 撮影・JUN

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