写真家・岡本央さん
retroism〜article173〜
プロの写真家の多くは、自分の興味のある「テーマ」を持って常に追いかけている。自然であったり人であったり乗り物であったりさまざまであるが、共通点が一つある。彼らの作業は、まるで際限のない広い荒野の中で、一つの穴を愚直に掘り続ける行為を思わせるところだ。その先に何かがあると信じてシャッターを押し続ける。撮っている時点では結果は未知だが、彼らは、何かに突き動かされるように進んでいく。
長きにわたり「子供」を撮り続けている写真家がいる。岡本央(さなか)さんである。
泥だらけになり遊ぶ子供たち。里山の自然によって彼らの心が解放されるのかもしれない=千葉・木更津社会館保育園の学童保育「土曜学校」で2018年7月
「子供を最初に撮り始めたのは、『この子たちが大人になった時に、原風景に何があるのか』と思った時でした。人によっては、ゲームだったり塾だったりする。勉強かもしれない。でも、僕の場合には農家の生まれで、かろうじて自然の中に原風景があったんです。手伝いなどの労働をギリギリ体験しているわけですよ。だから、遊びの背景には、田んぼだったり自然がしっかりとあったんです」
虫やカエル、ヘビでさえも子供たちにとっては友達だ=千葉・木更津社会館保育園の学童保育「土曜学校」で2011年9月〜12年6月
現代なら、子供たちの志向はスマホやゲームにいくかもしれない。それが、自然に向かうことを岡本さんは望む。本来、子供はどろんこにまみれて遊ぶのが当たり前の姿だった。それを残したいからシャッターを切り続けているのだ。
子供女剣士による海辺の決闘!? 鹿児島県奄美大島で 2007年
きっかけは、教育関係の出版社にいた時に訪れた。昭和50年代、塾の紹介とか入試や進路に関する写真を撮っていた頃だった。「ちょうど、自然の中での遊びがなくなっていく時代。そんなに遠くない将来に、昔ながらの当たり前の遊びが消えてしまうのがはっきりと見えてしまったのです」
イナゴ取りのお手伝いに精を出す。宮城県岩出山町(現大崎市)で1981年