格式あるアカデミックな空間で非日常を味わう

 幾多の受難をくぐり抜けてきた学士会館では、さまざまな出来事が起こった。36(同11)年の二・二六事件時には、第14師団東京警備隊司令部が置かれた。41(同16)年に第二次世界大戦が勃発すると、翌年以降、会館屋上に高射機関銃陣地が設けられたりもした。戦後、頑丈に作られた学士会館はGHQ(連合国軍総司令部)の高級将校の宿舎となり、56(同31)年に返還されるまで将校倶楽部としても使用されていた。「一時は、建物の角の部分に星条旗が掲げられていたといいます」。広報の庄司純さんが昔の逸話を披露してくれた。

新館と旧館をつなぐ通路。一列に並ぶ照明が美しい

 会館の建築構造は、日本の耐震工学を確立した建築家・佐野利器(としかた)氏が中心となり、個性的なデザインで名を馳(は)せ、のちに川奈ホテル、芝パークホテルなどを手掛けることになる高橋貞太郎氏がコンペで優勝し設計した。庄司さんが解説する。「高橋先生は、いろいろな工夫を凝らしています。例えば、十二角形の柱には、鋲で止めた人造石が張られています。石を『積んで』いるのではなく、『張ってある』ことを強調しています」

             チャペルに隣接する部屋には、曲線
と直線で構成された装飾が目をひく

 建造物全体を覆うのは、20世紀初頭にオーストリア・ウィーンを中心に建築界を席巻した「セセッション」様式が用いられた。全体をスッキリ見せながら、部分的に装飾を強調する印象的なデザインだ。それを如実に語るのがトンネルのような半円形のエントランスだ。「旧館の入り口は、七帝大の同窓会クラブということもあり、英知を表すオリーブの葉を配しています」

1928(昭和3)年から客を迎え入れている半円形の入り口。てっぺんには、ギリシャ神話に登場する女神アテナの贈り物オリーブの装飾が施されている

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