本物の京急車両に触れ 通勤通学、旅の思い出紡ぐ

 また、展示室中央に展開されている「京急ラインジオラマ」は、沿線風景を再現していて見応え十分だ。街を彩る車やバスなどは、同館スタッフや京急OBが自ら作ったり、持ち寄ったりしたものもある。社員全員で協力して作られたミュージアムだから、細部にもこだわるのだ。

道床用のバラスト(列車の運行を安定させるクッションのような役割)として使われるのは主に玄武岩だ

 「工場地帯に出勤される方、海に遊びに行く方など、東京のベッドタウンとして横浜北部や南部の人々の足の役割を果たすのが、我々の色(使命)だったのです」。つまり、人々の生活と観光を支えてきた路線である。京浜工業地帯でいうと川崎の臨海部や横浜市鶴見区は都心に近く、居住者が増え続けてきた。「ここから都心に通っている人も随分多くなりました。街の移り変わりに合わせつつ、ダイヤ改正や車両の改良などをしながら、お客様を運ぶのが私たちの責務であることは昔も今も変わりません」と小林さんはうなずく。

使い古された通称「改札パンチ」(切符を切る改札
ばさみ)。どの駅にも、改札担当の職員たちが鳴ら
すカチカチと言うリズミカルな音が鳴り響いていた

 一方で、京急は海水浴や登山への観光列車の側面も持っている。実際に、週末の朝や夕方には、大きなクーラーバッグを持った釣り客もよく見かける。ちょっと悔しそうな顔をした人を見ると、「ははーん。釣れなかったんだな」と想像する。傍で若い女性の3人連れが、「みさきまぐろきっぷ」を手に、おいしかった刺し身の話に花を咲かせていたりする。京急ならではの光景である。「先人たちの思いを忘れたくはありません。昔も今も、京急は通勤電車ではありますが、『観光列車だよね』って言ってもらえるような企画とか取り組みができたらいいと思っています」

若い家族が子供を連れて、古い電車を見学する。
「少年よ、ぜひ鉄道マンを目指してくれ!」   

 デハ230形236号の前で、小林さんは「鉄道ファン」の少年のように、キラキラと目を輝かせた。

けいきゅうみゅーじあむ
横浜市西区高島1-2-8京急グループ本社1階
📞:045-225-9696
休館日:火曜(火曜が祝日の場合は翌日)、年末年始および臨時休館日
入場料:無料(土日休日は要予約、平日は整理券が必要)
文・今村博幸 撮影・JUN

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