本物の京急車両に触れ 通勤通学、旅の思い出紡ぐ

 オープンして2年余りの館内は、奇麗で清潔感が漂う。すっきりとした印象だが、中身はこだわりが詰まっている。圧巻は、歴史的名車両と呼ばれる「デハ230形」(実物)の存在感である。1929(昭和4)年に完成し、運行は翌年だった。当時の技術の粋(すい)を集めて作られた。「極めて高性能かつ高品質の車両でした。私どもの誇りです」

 ミュージアムの中でも、大きな窓際の目立つ場所に設置されていて、正式名称は、「デハ230形236号」(6番目に作られた230形)である。品川から三浦半島までの長距離を意識して、部品の素材から見直して軽量化を図り、高速化に成功した。「高速車両の草分け的存在で、速さと快適さではどこにも負けない自負がありました」と小林さんは胸を張る。

デハ230形236号の全景。「京急は赤い車両というお客様の意識は強く、実際に多いのですが、当社のイメージカラーは実は青なんですよ」と小林さん

 軽量でありながら頑丈な車体構造をもち、「地下鉄・郊外」の双方に適した車両でもあった。車輪の動きの要となるベアリング(受け軸)にも改良が加えられ、走行性能に大きく寄与した。景色を楽しんでほしいとの配慮で、窓は大きめに設計され、柔らかくフカフカなベンチシートを採用。現在の京急の椅子もかなりフカフカなのは、その名残かもしれない。

天井に設置された扇風機が唯一の空調。実際に自分の方へ向いた時には、かなり涼しかった

 天井につるされている360度回転する扇風機は昔の電車ではデフォルトだった。クーラーなどなかった時代。空調は扇風機頼みだった。窓をいっぱいに開け、扇風機が回ってきた時の心地よさは、子供ながらに感じていた。展示車両の床の一部はガラス張りになっていて、内部構造が見られる工夫が施されている。電車好きの子供たちのみならず大人も興味津々だ。

 「展示してある資料も含め、手作り感を大切にしています、実際にOB社員が集めてきたものを多く展示しています。現役社員の中でも、当時を知る人が少なく、彼らの力がなければミュージアムの完成はなかったでしょう」

灰皿の形が特有。電車を待つ時間には、多くの人が周りを取り囲んだ。煙たいなどと言う人はほとんどいなかった時代だ

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