ドキドキ感が楽しい! 銀塩カメラで撮る幸せ

写真家・赤城耕一さん

retroism〜article108〜

 プロのフォトグラファー・赤城耕一さんは、フィルムカメラが大好きだ。

 最初の出会いは、いとこが持っていた古いカメラを見せられたときだった。1959年に発売され74年まで製造され続けたロングセラー「ニコンF」である。「グラフィックデザイナーの亀倉雄策さん(1915ー97)が手がけた精悍(せいかん)なフォルムが印象的で美しかったのを覚えています」

お気に入りのライカM3(1954)を優しくなでるよう
に手に包み込みながら、話を聞かせてくれた赤城さん

 真ちゅうで作られたずっしりとしたボディーの腑(ふ)に落ちるような量感、触れた時の心地よい金属特有の冷たさや、シャッターを切った時の歯切れのいい機械音、ファインダーをのぞいた時の見やすさや奇麗さなどが、自分の体に共鳴したのではないかと回想する。その想(おも)いは今、多く所有するフィルムカメラに対しても変わることがない。手の中に収めた時、古いカメラしか持ち得ない魅了されるような説得力がある。重量感に関して言えば、「機械」だからこその特徴である。

ライカM3にズミクロン50mmを装着したお気に入りの
一台。ファインダー性能はM型ライカの中でも最高峰だ

「デジタルカメラもそれなりの重みはあります。でも、重みの質が違うんです。趣味として持ち歩くフィルムカメラは、大きければ大きいほど、存在感があっていい。仕事なら軽い方が断然楽ですけどね。デジカメの場合には、素材の重さと言うよりも、いろんな機能を加えるための部品の重さといった方が正確でしょう」と赤城さんは古いカメラに目をやった。面構えもそれぞれ個性的なのがたまらない。モノづくりに対するメーカーの燃えたぎる思想がたっぷりと注入されているのだ。「それを考えると、今、個性的なカメラってあるのかなという疑問はあります。少なくとも、面白いデザインは少ない気がしていますね。心の底から欲しいというカメラがないんですよ」

ゾナー40mmF2.8を装着したローライ35Sをはじめ、フィルムカメラを楽しむなら、「こんなのどうですか」と見せてくれた自慢の愛機たち

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする