大正ロマンいっぱいのアンティーク店

東京蛍堂(東京・浅草)

retroism〜article17〜

 浅草のとある細い路地の先にその店はあった。店主の稲本淳一郎さんは心ある人物で、大正ロマンを思わせる古物もろもろを商う。「ある時、店の中で涙を流しながらたたずんでいるおじいさんがいたんです。齢(よわい)90歳とおっしゃっていました。泣いてる理由を尋ねると、『昔けんかばかりしていた親父と仲直りができたような気がする』とおっしゃったんです。こんなこともありました。小さな女の子が、商品を眺めながらぼーっとしている。そしてぽつりと言うんです。『懐かしい』って。なぜかは分かりませんでした。もしかしたら、誰かがどこからか蘇って来て、彼らにあいさつしてくれたのかもしれません」

店を借りた時には板で覆われていた半地下の食料庫。正面のステンドグラスは愛知の遊郭にあったものをそっくり移した

 大正時代からあった野口食堂の従業員宿舎兼食料貯蔵庫だった跡地が「東京蛍堂」として生まれ変わった。この場所を借りる時から、稲本さんは不思議な縁(えにし)を感じていたと言う。

大正時代を思わせる着物や帯などを、多くそろえる

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