美しい建造物と下水処理場の遺構 コラボに酔う

 遺構は、よく保存されている。施設の表玄関として入り口にあたる門衛所、東西に1棟ずつある入口阻水扉室上屋(いりぐちそすいひしつうわや)の地下には、メンテナンスなどのために下水の流れを一時的に止める扉があった。沈砂池(ちんさち)も東西に各一つずつ水のない状態で見学できるようになっている。下水を池の中でゆっくりと流すことで、下水に含まれている土砂類を沈殿させて取り除く最初の処理が行われる場所である。

沈砂池から二つに分かれて流れて来た水が、ここで合流する。コンクリートの上に瓦が敷き詰めてある

 ここから水を吸い上げるために作られたトンネルに入っていき、下水は2系統に分かれて流入してくるが、トンネルの中で合流し貯水槽である各喞筒井(ぽんぷせい)へと続いていく。「仕上げが奇麗でしょう? アーチも横のラインが滑らかな流線型。だから、水が流れやすいんです。職人さんが、丁寧に仕上げたものですからね」。足利さんは案内しながら、そう言った。喞筒井で流れを整えた下水は、喞筒室へと組み上げられる。その後、ポンプで水をくみ上げ水処理施設へと送られる仕組みだ。

当時は、付属している真空ポンプで本体を真空
にしてから、起動して下水を吸い揚げていた

 足利さんの話を聞きながら、当時の姿の各施設に身を置くと、下水の本当の重要性を肌で感じられる。その場所からは、当時の人たちの英知と努力の痕跡がはっきりと感じられるのである。

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