美しい建造物と下水処理場の遺構 コラボに酔う

 その流れでいくと、もはや三河島は、我々日本人にとって文化遺産であり貴重な財産でもある。「今後、文化財を保存していく上で課題もありますが、なんとか残せるように頑張るつもりです。下水の話は、わかりにくいところもあるけれど、みなさん訪れてくださって説明を聞きながら施設を見学した後『大変なことをしてるんですね』って言ってくださいます。それがうれしいんです」。足利さんが、照れたように目尻を下げた。

喞筒室から沈殿池に通じる巨大なパイプ(送水管)。見るからに頑丈そうだ

 喞筒棟の造りは、セセッション様式が採用されている。オーストリアのウィーンで発祥したと言われる建築形式だ。垂直線と水平線を多用する新しい様式は、アールヌーボーの一様式として認識されている。明治の終わり頃、日本に伝わり、大正時代に流行した。

下水から取り除いた土砂類などを積んだトロッコを引き上げる装置(インクライン)が通ったレールの一部が残っていた

 平面に垂直線と水平線。同じ間隔で窓があり、飾らない美が追求されている。建物を正面から見ると、ほぼシンメトリー(左右対称)だ。簡素さの中にある美しさが見える建造物と下水施設のコラボレーションに、酔いしれるのも悪くない。

きゅうみかわじまおすいしょぶんじょうぽんぷしせつ
東京都荒川区荒川8-25-1
📞:03-6458-3940
受付時間:午前9時〜午後5時
同施設の見学予約受付サイト

文・今村博幸 撮影・JUN


 

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