レトロ散歩其ノ拾参(横浜・六角橋商店街)

あとがき

 大人同士なら、どちらかが道を譲らなければ通れない程の狭い商店街に鮮魚店、総菜店、雑貨店など70店舗が軒を連ねている。道幅は最も狭いところでは1.8㍍だという。すれ違いざまに人の体温を感じるほどだ。


 横浜・白楽にある六角橋商店街大通りとその路地裏にあたる「ふれあい通り(仲見世通り)」を歩いた。戦後すぐに闇市から始まった、横浜を代表する商店街である。商店街に並ぶのは、生鮮食料品から花屋やカバン屋、アクセサリーの店などほとんどの生活必需品が手に入る。

 ふれあい通りを進むと、中央あたりに、小澤士郎さんが営むおでん酒場「かずさや」があった。少し大きめのテーブルだけの飲み屋で、メインはおでんだが、刺身など他のつまみもうまい。午後3時に開店した店頭で話を聞いていると、あっという間にほぼ満席となり、ほとんどの客が数杯飲んで帰っていく。人気店であり、客の回転も早いのである。

 買い物客も多いが、最寄りの白楽駅から神奈川大学への通り道になっているため、学生を含め若い人たちが行き交う姿もたくさん見かける。この商店街に元気が感じられるのは、若者が発するエネルギーのせいかもしれない。さらに、さまざまなイベントを開催しているのも、その活気に寄与している。春と秋に開催される「ドッキリ市」は全店挙げての大売り出し。毎年4月から10月の第3土曜の夜に開かれる「ドッキリヤミ市場」(午後8時から10時まで)では、シャッターの閉まった店の前でさまざまなグッズなどが売られるフリーマーケットが開催されるほか、ジャズライブやフラメンコ、フラダンス大会が行われる。また8月には迫力満点の「商店街プロレス」が催され、訪れる客を熱狂させる。

 何度かの火事を経験しているが、その都度地元の人たちが力を合わせて、歴史を繋いできた。そんな底力を感じさせる商店街でもある。基礎となっているのは、戦後の闇市から発展してきた、人々たくましさに支えられているからかもしれない。

 ブラブラと歩いて最も感じるのは、懐かしさとともに、この街を作ってきた人たちの変わらない血の通った人情と、途切れることのない息遣いである。ふらっと立ち寄っただけで、元気が出てくるのである。

文・今村博幸 撮影・JUN 

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