名物は「スパピザ」 幼少の記憶が蘇るハマの老舗

 横浜のザ・ホフブロウは、まだ日本がアメリカに接収されていた頃にオープンした。ステンドグラスがあるのも、ドイツの本家に似せてあると思われる。開店早々、あっという間に船員たちの憩いの場所となった。彼らにとっては、長い船の中での労働と生活の疲れを癒やすための場所だった違いない。陸に上がって真っ先にホフブロウに集まった。「当時は、カウンターはもちろんテーブル席にも、外国人のお客様がずらっと並んでいたそうです」。それが異国情緒をさらに盛り上げていた。

エンジン・テレグラフ(操船者が機関室に前
進、後進、停止などの指示を伝えるための装
置)。年代は古いが、入り口入ってすぐに目
 に飛び込んでくる。これ一つで船を想起させる

 「最初ホフブロイハウスをイメージしていたのですが、途中から、横浜にあるということで、港町のイメージを付け足してきました」。帆船の精巧な模型や救助用の浮き輪などが目を引く。可愛らしい花びらのようなシェードをまとった電球もかなり古いもの。壁全体があめ色になっているのは、禁煙になる前までに積もった、たばこや葉巻の煙によるものだろう。壁の上に取り付けられた換気扇も個性的だ。浮き輪をほうふつとさせる

 オーナーが何回か変わっているので、メニューもそれにつれて変わってきた。「ドイツ系の料理から始まり、やがて、洋食屋のエッセンスを取り入れたため、あまりにも洋食屋然となってしまったので、今は、ドイツ系に戻った感じです」。当初は、腹ペコの船員のために、1人分のボリュームもたっぷりだった。彼らは体も大きいし、船の仕事は重労働なので腹が減る。そこで考えだされたのが、現在も名物として残っている「スパピザ」だ。「どうすれば船員さんたちを満腹にできるかを考えた時に、『両方合わせて一つの料理にしちゃえばいいんじゃない』、ってことになったみたいですね」。スパゲティとピザの両方が同時に味わえるスパピザは、瞬く間に人気となった。

いろいろな形の照明が混在する店内。統一感はない
が、バラエティーにあふれ、かえってそれが面白い

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