未来に向かう昭和に生きる人たちのことを考慮に入れながら、住宅内の設備などにも工夫がみられ、コミュニティーの多様化も見込んで、単身者用や店舗などが地域の特性に応じて配したセンスも巧みだった。結果として、街並みの向上にも多大な寄与をもたらしたのも特筆すべき点であろう。
各部屋のドアは、さまざまなタイプがあった。向かって
右奥の二つは青山アパートの玄関扉、真ん中の四角い窓
は代官山のアパートの玄関扉、星がついたものは同アパ
ートの食堂内階段。手前は同食堂への入り口扉
今回は代官山と青山に建設された同アパートの建築部品など、本邦初公開となる資料を展示しながら、建造物という視点で昭和の底力と魅力に迫る。
東京23区に住う人間にとって、代官山や青山に立つ、それまで見たことのないユニークでしゃれた作りのアパートはいやでも目を引いた。街のランドマーク的な存在でもあったのだ。青山・代官山には、電気や水道、ガスといったインフラ整備、ごみを捨てる「ダストシュート」も設置されていたほか、コルク張りの床にござを敷くことで和洋どちらの生活にも対応できるような工夫が施されていた。