時空を超えた作り手の想いとブリキの輝き いまも

 大きな利益を生んで、費用対効果も大きかった。紙などを素材にして乗り物やロボットが作られたこともあったが、質感や堅固さなどでは、ブリキのおもちゃには対抗できなかった。なかなかその牙城は崩せなかったのだ。「ブリキのほうが本物の車っぽいし、実際、作り方も本物の車と同じような作り方をしているんです」

トヨペット・クラウンの3車種。一番右が初代で、2代目、3代目と並んでいる

 世界的に見ても、一つの時代を築いたところが、ブリキのおもちゃに魅力があったことの証明にもなっている。「はやり廃りのあるおもちゃは、はかないものです。でも、ブリキのおもちゃは、世界的規模で多くの人たちの気持ちをつかで離しませんでした。同時に彼らの心を癒やしてきました」

天井からぶら下がる戦闘機。経年変化で一部ブリキの下地が露出しているが、それがまたいい味を出している

 モノを通すと、時代をタイムスリップして、想像力をかき立てられるのも楽しさの一つだ。「捨てられずに残ってる意味は、何かあるはずです。おもちゃのどこかに、『1950年代、ジャーマニー』って書いてあったら、その時点で時空を超えているんですよね。だからこそ、ブリキのおもちゃを集めている人が世界中にいるんだと思います。ディスプレーとして、格好良く飾れますしね」。モノを通して、日本の昔のことを学ぶことができる。「昔のモノと自分の距離感を感じた時に、古いものから新しいものも生まれてきたんだと気がつくのではないでしょうか」

横浜・山手の丘の上、メイン通りから横道に入ったところに、「ブリキのおもちゃ博物館」はある

 世に出回ってから70年近く経っているのに、当時の輝きを保っている。それは表面のメッキのだけではない。制作した人たちの情熱と想(おも)いが染み込んでいるからである。

ぶりきのおもちゃはくぶつかん
横浜市中区山手町239
📞:045-621-8710
開館時間:午前9時30分~午後6時(土•日・祝~午後7時
定休日:年中無休
入館料:大人200円、小・中学生100円

文・今村博幸 撮影・JUN