37(同12)年のたすき掛けをして九段下交差点を行進する愛国婦人会の会員たちの表情と、48(同23)年に撮られた靖国神社のみたままつりで踊る女性たちの顔付きの違いも、戦争前後の人々の心を映し出している。戦後、皇居の濠が畑として利用されたのも、知る人は少ないだろう。
改めて思うのは、九段下という場所が、靖国神社や千鳥ケ淵戦没者墓苑などに象徴されるように、憎むべき戦争(第二次世界大戦)と深く関わっているという事実だ。同写真展は、終戦後の45(同20)年以降、平和が訪れ、急速に豊かになっていく国の原点を見せられるようで、実に興味深い。
写真展「うつりゆく昭和の九段下界隈」のパンフレット。裏には、建物の位置などを示した地図もあって便利だ
どんな場所も時代と共に移りゆく。後にホテルやレストランとして使われた軍人会館が完成した同じ年の神保町の裏通りは、喫茶店や雀(じゃん)荘が並んでいた。同写真展が見る者に提示するのは、時代の「明」と「暗」でもある。そして我々が目指すべきは、明るい未来であると再認識させられるのである。
午前10時〜午後5時30分(入場は5時まで。毎週月曜日休館)。入場無料。問い合わせは、昭和館03・3222・2577。
【レトロイズム編集部】