令和の若人に昭和の元気と活気、情熱を届けたい

 青梅駅から徒歩5分ほどのこのあたりには、もともと商店が軒を連ねていた。店主たちが集まって作り上げたこの博物館もかつて存在していた家具屋の建物をほぼそのまま使っている。展示物は、近所の家にあったモノを持ち寄ったり、昭和B級文化研究者の串間努氏のコレクションなどから拝借した約7000点を陳列する。倉庫には、まだ並べきらない商品パッケージがあると横川さんは言った。

沢田研二と映画看板に描かれた「千両獅子」の市川右太衛門が並んでいるのが面白い。もちろん両者とも昭和の大スターだ

 また、青梅駅周辺は映画館が並ぶ街でもあった。その雰囲気を復活させようと、94(平成6)年に往年の名画の看板が街のいたるところに飾られた。描いたのは、最後の看板絵師と言われた故久保板観(本名・昇)氏である。昔と同じく泥絵の具を使用。そのうちのいくつかが、館内に飾られている。「映画の看板は、上映されている短い期間だけ掲げられるもので、長く置いておくものではありませんから、雨風にさらされてすぐにだめになります。だから、私どもは、本物の絵師が描いた貴重な資料として、当館に保存しているのです」

各家庭に必ずあった大型のマッチ箱。お父さん
にとってはたばこのお供、お母さんたちは、主
に台所でガスコンロに火をつけるのに用いた 

 映画看板が並ぶ街として、横川さんの父親であり館長の秀利さんが中心になり、町を盛り上げようと企画した施設の一つが、この博物館だったというわけだ。「『昭和レトロ』という言い回しは、父が元祖だと言われています。それから青梅は、レトロな町として皆さんに認知されるようになりました」。以前は比較的、年配の客が懐かしさを求めて訪れることが多かったが、最近は若者の割合も増えていると、横川さんはうれしそうだ。「年配の人はもちろんですが、若い人たちに、昭和の元気を届けるのが僕らの仕事だと思っています」

歴史的建造物に指定されている元家具屋の建物をほぼそのままの状態で使用。館内へ足を踏み入れると、昭和の熱に襲われる

 彼らに何かを感じ取ってもらいたい。さらにそこから、新たな何かを生み出すきっかけになってほしいと切に願うのである。

しょうわれとろしょうひんはくぶつかん
東京都青梅市住江町65
📞0428-20-0234
開館時間:午前10時〜午後5時
休館日:新型コロナ感染拡大防止のため当面は月〜木曜(祝日の場合は開館)
入館料:大人300円、小・中学生200円、団体(10人以上)大人300円、小・中学生150円
https://twitter.com/gentokan

文・今村博幸 撮影・JUN

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