ごく最近でいえば、2024(令和6)年1月1日の能登半島地震という悲しい出来事が起こってしまった。実際にこういった災害が起こらないと、我々の脳裏からほとんど消えてしまうのが下水道施設の存在であり、その有り難さだ。足利さんは「私たちは、日常生活で水道、電気など断水や停電になると不便を感じやすいと思いますが、下水道は使えなくなるまで必要性を感じにくいんですよね」。下水道はライフラインそのものなので、我々が快適な生活を送れているのは、下水のおかげだということを忘れてはならない。
1922年にイギリスから輸入したベンチュリメーター。ポン
プで吸い上げる必要上流れてくる水の量を測るためのものだ
1999(平成11)年、稼働していない下水処理場をどういう扱いにするかという議論が持ち上がる。当初は、喞筒室だけでも残してはどうかという話から始まった。「何しろ、日本で最初にできた下水処理施設ですから、日本の下水道文化のシンボルと言っても過言ではないと思います。
桜の木がよりそう喞筒室の側面。建築物としても見応えあり
東京都下水道局では97年(同9年)に「文化的資産保存検討委員会」を設置し、この施設を後世に伝えようとしました。その10年後の2007年(同19年)に国の重要文化財に指定されたのだった それは、ここで働いて来た多くの人たちの希望でもあった。「歴史的な遺産は残すべきだということになったわけです」。足利さんは、少し得意げな表情を見せた
コンクリートがはがれて小石などが露出している昔のままの壁
東京の近代化の中で、下水道の果たして来た役割は非常に大きい。「東京の下水道の普及率は、昭和40年代には20%でしたが、1994年(同6年)に概成100%なりました」。下水道の主な役割は、①家庭や工場などから排出された汚水を処理して快適な生活環境を確保するとともに、下水をきれいにした水を川や海に流し、その水質を改善する。②道路や宅地に降った雨水を排除して浸水から街を守る③下水道の汚泥(下水の汚れを微生物が分解した除去物)を焼却し、その灰を資源として有効利用したり、下水の熱を利用して再生エネルギーとして有効活用しているーーなどである。
キング・ポスト・トラス構造を用いた喞
筒室の屋根の骨組み。強度に優れている