絶滅危惧「クラカメ」の楽しさと文化を次世代に

 現在、60年以前に作られたカメラを売る店は、世界でも減っているし、日本でも少ない。「だから、店を辞めちゃったら、クラシックカメラが終わっちゃうと思ってるから、のれんを下ろせないんだよ。幸い息子も継いでくれそうだしね」。それは客のためでもある。「昔からのお客さんが、ここの前を通ったときに、まだ店が残ってるのを確認して、安心してもらえれば幸せです」

「たまたま、見つけて入ってきたらすごい店だった」。
ニコンFM2を大事そうに抱えた客のジャッキーさん 

 早田さんは続ける。「頑張って、いろいろなカメラを買って使って楽しむってことが大切。ウチのショーウインドウで見て触って気に入ったからって、『なくなる前に早く買わなきゃ』なんて思っていると買う人もせわしないし、売るほうとしても疲れるのね。焦って買うことはないんだよ。それよりもいろいろなカメラを長く使ってほしい。20年前にウチに来たけど店も(同じ種類の)カメラもあったというのが、僕も含めてカメラを愛する人にとって大切なことなんです」

   古い書籍の存在も早田カメラ店の歴史を静かに物語る

 早田さんは少しだけ口を曲げた。「でも今、それもつらくなってきてるんだよね。品物探すのも大変なんだよ」。古いアナログカメラの楽しさを語る早田さんは満足げな表情で話を続けた。「シャタースピード、絞り、フィルム巻き上げだとか巻き戻しだろうが、考えながら全部自分でやらなきゃいけない。腕のいい撮影者にかかれば、奇麗な写真が取れるんです。昔は、いい写真を撮ると腕がいいと言われたよね。最近は、いい写真が撮れた時には、いいカメラ持ってますねって言われるのは、時代なのかな」
シルバークロームの古いレンズ。黒が主流となった現在では逆に人気が上がっている