昭和の名曲「神田川」の世界をジオラマで再現

 2階の見どころはなんと言ってもジオラマだろう。かぐや姫の「神田川」が流れ、歌詞と同じシーンが再現されている。3畳一間の小さな下宿で24色のクレパスを使い、ちっとも似てない彼女の似顔絵を描くシーン、赤い手ぬぐいをマフラーにして待たされる彼女の姿が情緒豊かに再現されている池袋駅を再現したプラレール。かなり凝っている

 世代によっては、分からない人がいる。だから、知っている人は若い人たちに伝える義務がある。「僕らはこうやって暮らしてたんだよ」というのを残していかないと寂しい気がする。小倉さんは、来館者が感想を書く付箋(ふせん)を見ながらほほえむ。「昭和の暮らしに実感がわくかどうか分からないけれども、小学生の男の子が、『ジオラマすごかったです』って。『また来ます』って書いていたんです。うれしいですよね」。小倉さんは続ける。「またこんなこともありました。6歳の娘さんが、ジオラマを食い入るように見てたんです、『お父さんと一緒に昭和にタイムスリップできました』って書いてくれて、すごく喜ばしいコメントをいただきました」

テレビが我が家にやってきたときには、家族が1人増えた気がした


 秋山さんが言葉を継いだ。「若い人たちにとっては、そのシーンは、新鮮だったと思うんです。初めて見る世界ですからね。両親だったり、おじいちゃんおばあちゃん世代の中には3畳一間で暮らしていた人がいた。そういうストーリーがジオラマから読み取れると思います」


(上)「人世」の横丁に酒場があり、人に会い別れて
 いく(下)次はどこの店に顔を出そうかと思案しなが
ら酒飲みは路地を歩く=いずれも山本高樹氏の作品