「音楽とレコード愛」 父から子へ受け継がれ

 中古レコード店を営む喜びを高橋さんが語る。「お客さんにいろいろなことを教われることでしょうね。とにかくこだわる人たちは、ものすごく勉強してますから」イギリスにデッカというレーベルがある。そのデッカレーベルじゃないところから出てるレコードを製作したのが、デッカのチームというケースであることも客から教わって驚いた。また、「これはRCAのスタジオb(同スタジオの古い方)で録ったものと聞くと、「これがスタジオbの音なんだと知る。「そんなことを教えてくれるかなり年上の方も来店くださいますが、彼らに『高橋は結構いいセンスしてしてるぜ』って思われたらありがたいですね」。そして、不適な笑顔でこう続けた。「こいつ何にもわかってねえな、俺が育ててやるよみたいなね、そういう目線のお客様もいらっしゃるじゃないでしょうかねぇ」

レコードを掘る(探す)作業は、好きな人にとって楽しい時間だ

 店を営みながら高橋さんが思うことがあると店内を見回した。「人生が変わるとまではいかなくても、見る景色が変わるような一枚(のレコード)に多くの人が出合えればと願っています」。実際に自身もそんな経験を何度かしてきた。今でも忘れないのは、20代の頃に聴いたロマン派オペラの最高峰と言われるリヒャルト・ワーグナーのニーベルングの指環である。全てを聴くためには、数日かかると言われる超大作で、高橋さんも1週間かけた。「ワグナーファンに怒られそうだけど、あんまり抑揚っていうか、派手な刺激的なところがないし、淡々と歌ってるみたいな曲で、それだけ聴き続けるには、体力も必要なんです。親父に20代のうちに体験しておけと言われたんですが、本当に疲れました」。そのレコードを聴き終わり、外の景色見たら全く違ったものが見えたように思えた。「音楽には、そういう力があるってことですね」

(上)SPレコードは鉄針でないと聞けない。自慢のプレーヤーはイギリスの名機ガラード(下)このターンテーブルが乗る棚も自作だ

 高橋さんがもう一つこだわるのは対面商売だ。商品の特性上、盤面にある傷などをきちんと確認してほしいからだ。さらに、ジャケットのよれ具合も一つひとつ違うので、納得してから、購入してほしいと考えている。「それに店に足を運んでもらえれば、全然知らないレコードを見つけることもありますからね」。そんな時には、その一枚が光って見えることだってある。

質素な店構えだが、中身は濃い。きっといい時間が過ごせるだろう

 「一度、どうしてもほしい一枚があって、あるレコード屋さんに行って、長い時間うろうろしていたら、『いつまでいるんだこのガキ』って思われたようで、店主から、「何探してるの」って聞かれたんです。これですって言うと、『今うちにはないな。どうしてもほしいなら荻窪に行きな。月光社って店があるから、そこならあるかも』って言われました。うちもまあまあ有名なんだなって思いました」

 高橋さんは相合を崩してほほ笑んだ。 

げっこうしゃ
東京都杉並区上萩1-4-11
営業時間:午前11時〜午後8時
定休日:火曜
📞:03-3398-2092

文・今村博幸 撮影・JUN