「音楽とレコード愛」 父から子へ受け継がれ

 「だからみなさん初版にこだわるんです。さらに、スタジオによっても違いが出てきます。コーディング・エンジニアがヘッドホンをつけて、ブースで音を作っていくわけですよね。それをもう一度プレーヤーがテイクバックする。OKが出れば、生テープが完成するでしょ。次に今度マスタリングを行ったり、リミッターをかけたりして完成することになります」。さらに「こんな感じになりましたぜ」ってミュージシャンに聴かせてOKが出れば、音の高低強弱を示す溝を刻むカッティングという作業に入り、スタンパー(金型)で仕上げていく。それらの工程の全てにレコーディング・エンジニアが関わってる。生音を聞いてる人が確認したものが、初版となって店頭に並ぶのである。もっとも生音に近いのは言うまでもない。年季が入っているレコードを持ち運ぶための専用カバン。音楽をダウンロードして聴く今の時代に対するオマージュのようにも見える

 結局、レコードとはなんなのか? 改めて聞いてみると、面白い答えが返ってきた。「僕は、その問いに対しては、よく料理に例えるんです。生演奏じゃないという意味では本物じゃないんですよ。言い換えれば、缶詰みたいなものって思ってます。コース料理で出てくるような本格的な料理じゃなくて、家に持ち帰って食べる上質な缶詰なんです。店で食べるのとは違うけれど、缶詰にしか出せない味があって、まさにそれかなって考えています」。コンサート会場で聴く生音が一番いいに決まってる。しかし、初版はその生音に近い。「持ってるだけでうれしいし、『これ初版だぜ』って自慢できるしね」

数は少ないが、一応C Dも置いてある

 ただ、そこまでこだわる人はそれでいいが、2版でも3版にもメリットはあると高橋さんはうなずきながら言う。「安い値段で、気楽に楽しめるところがいいんです。もちろん今まで話した通り、厳密に言うと音質は落ちるけど、初版の何分の一の値段で、十分に楽しめる。それって、大切なことだと僕は思っています」。だからこそ、極力安いプライスで提供するようにしているのだ。

小さな店の中心に陣取る棚には、150円均一のC Dもある