ヨーロピアンロックに顕著だが、よく練られた楽曲、様式美を備えた音楽を勧めていたらしい。「もうちょっと頭使って考えろよ、と言うことだったと思うんですが、いやいや、パンクロッカーだってものすごく考えてるし、詩を書くにしても、いかに韻を踏むっかていう作業を、熟考に熟考を重ねてやってるのに、それが前面に出てないことを、おそらく父は嫌だったのかなって、なんとなく思います。父が何を考えていたかは、もはやわかりません。でも今考えてみると、スリーコードだけでできているような子供っぽい音楽はダメだと、決めつけているような気がします」
レコード屋ならではと思える時計。店の歴史を感じさせる
ただ、音楽に対する感性を必要とするものに対して、息子に伝えてくことはとてつもなく重要なことだと思う。あとは、高橋さん自身が、父親の言ったことを自分の中でかみ砕いて、好きな音楽聴けばいいだけのことなのだ。
「一つ僕が思うのは、音楽のジャンル分けって、そもそもあまり意味がないと考えています。それは売る側の理論であって、聴く側はそこ(ジャンル分け)にはこだわってないんじゃないかと。だから当店のジャンル分けはレコード会社別にしました。最近は外国人のお客様も増えてますが、彼らも面白がっていますよ」
自分の手で背表紙にタイトルを書く。レコードに対する高橋さんの愛情が伝わってくるようだ
中古レコードの魅力は、何回目のプレスを見つけられるかにもある。もちろん初版には価値があるが、何回目かによって、音も違ってくると高橋さんは強調する。「初版が生音に一番近いのは確かですが、2回目、3回目にプレスされたもののほうが音的には良かったりする。聴き比べると全然違いますよ。そこら辺を比べるのも楽しみの一つでしょう」。つまり、中古レコードは、工業製品でありながら1点ものということだ。だから溝を掘られた時期によって違う音を楽しめる。「中古」であることに、大きな意味があると言えるのだ。古ければ古いほど価値があるということにもなってくる。そう考えると、薄いビニール一枚の円盤の意味は、かなり深いとも言えるのだ。
入り口の扉から店内を臨む。棚にはレコードが所狭しと並ぶ