鳥瞰図で名所案内 吉田初三郎が描く美しい日本

 会場は、三つのセクションに分類されている。まずは「初三郎の時代」。京都に生まれ、関西美術院で洋画家•鹿子木孟郎に師事する。そのころ鉄道沿線の名所案内などで、商業美術家としての名声を獲得したのは、多くの日本人が観光旅行に出かけはじめた時代の後押しを受けたことも理由の一つだ。ポスターや絵画は、関東大震災や戦争といった時代の動きともリンクしており、あらゆる角度から初三郎の作品を多面的に展示する。

 次の展示は「魅力に迫る」。「万人が見て楽しみながら解り得べきもの」と初三郎が語っているように、「初三郎式」と名付けられた鳥瞰図は細かい部分まで書き込まれているが、決して難解ではない。まっすぐに伸びる鉄道、広い範囲をわざと湾曲させて画面収めたことなどが分かりやすさにつながっているらしい。肉筆作品を中心に、1枚の鳥瞰図を描くために施された多様な工夫を解説する。 

 さらに、「制作に迫る」では、肉筆画に修正箇所などを鉛筆で書き込んだものや制作途中の校正刷りなど、パンフレットなどの印刷折本などが並ぶ。時代的にも、初三郎が活躍したのは印刷技術の進歩した時代でもあった。印刷技術と呼応するように変化していった鳥瞰図の変遷も時代の不思議を感じさせて面白い。

 

吉田初三郎 油彩画《地獄谷の渓流》
昭和5年(1930年)= 長野電鉄株式会社蔵

 豊富な展示物も魅力だ。10点以上の大型肉筆鳥瞰図、ポスターや絵葉書、さらには絵画作品などバラエティに富んだ初三郎の魅力を堪能できる。

午前10時〜午後5時(展示室入場は午後4時半まで)。休館日は月曜日。一般800(640)円、高校生・大学生400(320)円、小学生200(160)円。()内は20人以上の団体料金。問い合わせは、050・5541・8600(ハローダイヤル)。https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

【レトロイズム編集部】

 




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