書き手の思いがしためられた肉筆の手紙に魂感じ

コラム其ノ拾伍(特別編)

retroism~article241~

 ほんの30年前まで、人に何かを文章で伝えるツールは、手紙しかなかった。はがきや便箋に自らの手で文字を一文字一文字したためていた。

 手紙の最大の利点は、書く人の思いが深度を増して伝えられるところにある。ビジネスなら大切な契約が取れるよう、疎遠になった故郷の両親なら近況を文字に心を込めて気遣った。博物館などで、特攻隊の最後の手紙が展示されていることがあるが、そこから見て取れるのは、肉筆にしか表れない、これから死にいく人間の叫びである。

 ラブレターを書くときには、かなりの時間を要した。書いては破り、手で丸めてごみ箱に捨てること数十回。自分がどれだけ、相手のことを思っているかを言い表すのが難しいことが実感させられ、思い知らされる。相手の顔を思い浮かべながら、「好きだ」しか思い浮かばない歯がゆさに、イライラしたものである。

今となっては書く機会がめっきり減った手紙だが、手書きのものをもらうと無性にうれしくなる

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