書き手の思いがしためられた肉筆の手紙に魂感じ

 もうひとつ手紙には、他にはない優位性がある。火事などで燃えてしまわない限り、未来永劫(えいごう)残ることだ。(ラブレターに関して言えば、若い頃に書いた物が残っていたりすると、恥ずかしさしかないのが欠点ではある)。紀元前から残る文字は、我々にいまだに、人類の歴史を伝えてくれる。さまざまな古文書は、当時の人々の暮らしなどを克明に知ることのできる貴重な資料でもある。

 さらに、文字は人の性格まで表す。一人ひとりペンから生まれる文字から書いた人の人柄が垣間見えて面白い。明治時代の文人には、達筆の人が多かったという。特に樋口一葉は字がうまかったらしい。逆に乱筆で有名だったのは、石原慎太郎や中上健次だ。編集者が音を上げるほど悪筆だったらしい。「読めねーよ」と原稿を放り投げんばかりだったといううわさすらある。しかし、あらゆる物語が、手紙や「文字」に付随しているのは、なんとも興味深い。一方で燃えてしまうという難点もあった。取材などで、歴史のある店舗などを訪れたとき、言い伝えられているものはいいが、大正から昭和にかけて日本を襲った関東大震災、第二次世界大戦によって、貴重な手紙などを含む資料が失われたことは、実に惜しいことである。

ビジネスの世界においては、Eメールが主流となっている

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