アナログの楽しさと使いやすさ両立 PENTAX 17

 行き着いた一つのパーツとして、手巻きのレバーである。手巻きの部分を過去の製品の図面から起こしたものを使って自分たちが慣れ親しんだモノへの追憶を感じられるようにした。さらに洗練されすぎない、なじみのあるデザインを意識した。「懐かしくて手に取った時にクラシックな雰囲気を肌で感じられる部分を目指しました」。手巻き機構を採用するために、かつての一眼レフの設計図から手書きであらためて設計図を描き起こし、それに沿って組み込んでいった。その機構は複雑でたくさんの歯車や組み合わせ必要だが、一眼レフの手巻きの感触も味わえるようになった。今回お話を伺ったデザイナーの鈴木タケオさん。機械式カメラに対する愛情が半端ない

 「オールドファンなら分かってもらえると思いますが、新品の時のなめらかな感触を味わってほしいと思いました。そして、これからカメラを始めようとする若い人たちに伝えていってほしいとも思っています」。昔のいいものと今の優れたものをうまく融合させるのは難しい作業だった。若者と年齢を重ねたカメラ好きとは意識が違う。その辺りのバランスも徹底的に追求した。両者は複雑に絡み合っていると鈴木さんは言う。「若いユーザーさんに向けて作りたいけれど、 彼らに届けるためには、誰がこのバランスをいいって言ってくれるかというところが大切です。それをできるのはフィルムを知ってる世代の方しかいないんですよね」。伝えることによって、年齢を超えたコミュニケーションも生まれる。そこにも価値があると鈴木さんはうなづきながら言った。文化はそのような繋がりから広がっていくのだ。親会社のリコーは、1950(昭和25)年に「リコーフレックスⅢ」を世に送り出し、写真機というものの存在を一般の人たちに認知させ、カメラ人気をけん引してきた。リコーイメージングは、本来の写真と撮影の奥深い世界をあらためて世間に問うた。

 スマホ全盛の現代において、誰でも気軽に写真を撮ることができ、その場で確認できる便利な時代だ。かつては、カメラにフィルムを装てんして、写真を撮り、現像してから印画紙にプリントしていた。手間はかかるが、その分思い入れも深まった。このように時代とともに楽しみ方も様変わりしたと言えるだろう。そう考えると、アナログの良さを残しつつ、デジタル世代にも対応したPENTAX 17によってもたらされるのは、まったく新しいカメラの「価値観」なのかもしれない。

文・今村博幸 撮影・JUN