計算の道具から文化へ 昭和を支えたそろばんの力

日本そろばん資料館(東京・入谷)

retroism~article285~

 あらゆる要素が積み重なって、昭和の高度経済成長は成し遂げられた。その一つに、そろばんというシンプルだが高度に洗練された計算のための道具があったことは、意外と知られていない。

中国から伝わった五珠が二つあるそろばんを手に笑顔の谷さん。深い知識と引き込まれる話術の持ち主だ

 明治以降、外国と貿易を行う商社が次々と産声を上げ、取引高の増加に伴って事務仕事の量が拡大していった。下支えをしたのがそろばんだったのである。東京・入谷にある「日本そろばん資料館」の名誉学芸員・谷賢治さんは説明する「昭和40年〜50年代ぐらいまで、銀行や一般の会社は言うに及ばず、警察、生命保険会社に至るまでいろんな職場で計算の大切さを説いて、そろばんの練習をしましょうね、と国を挙げてやったんです」

展示室は小さな空間。その中に「数」に関する人間の叡智(えいち)や工夫があふれている

 昭和3年、東京市立実業学校珠算奨励会によって第1回珠算能力証明試験が実施された。以来、回を重ねるごとに着実に受験者は増えていった。数字を扱う能力が給料にはっきりと反映されるようになったからだ。逆に、数字そのものに苦手意識のある人、計算が得手ではないと判断された人は仕事ができないとみなされるようになる。企業がそろばんの上手い人たちを育てた部分もある、と谷さんは言う。


全長約3.5㍍の長〜いそろばん。存在感、大きさに圧倒される

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