写真家・一ノ瀬泰造が見た戦場と人間の姿に迫る

 展示される作品には、スクープを求めて取材した戦闘シーンに加え、戦時下を生きる人々の日常が数多く含まれている。特に、水牛と水浴びをする少年や弾薬箱で遊ぶ子どもたちの無邪気な笑顔は、戦争という日常しか知らない彼らの姿を写し出し、観る者の胸を打つ。下宿先の友人や戦災孤児との交流から生まれた、一ノ瀬ならではの人間味あふれる作品も見どころだ。

弾薬箱で遊ぶ子ども =カンボジアで、73623日©Taizo Ichinose

 展覧会タイトルとなった「もうみんな家帰ろー!」は、一ノ瀬が1973年9月3日のカンボジアでの戦闘取材中、硬直した戦況下で相手側の兵士たちに向かって叫んだ言葉だ。緊迫する状況下でも、そして、相手が誰であろうと分け隔てなく接し、ユーモアを持って心を通わせようとする一ノ瀬の人間性が表れている。

一ノ瀬泰造本人直筆の取材原稿(7)。特別写真展のタイトル「もうみんな家に帰ろー!」はこの原稿の一文から付けたという

 本展は、世界的なスクープを目指しながらも、何よりも「人間」を見つめ続けた一ノ瀬泰造の眼差しに触れ、改めて平和の意味を考える貴重な機会となるだろう。

 開館は午前10時〜午後5時。入館無料。問い合わせは03・3261・0300(JCIIフォトサロン)。

【レトロイズム編集部】