時空を超えたお宝の数々 文化的な奥深さ漂う空間

 1960〜70年代には丸の内でイタリア製婦人靴店を営んだりしたが、やがて2人の仲間とともに、青山に骨董店を開店することになった。閉店後などの暇を見つけては表参道や六本木で古物の露店を開き、若い人などの嗜好(しこう)などを研究していたという。そこでは、主に大きめの旅行カバンや、理由は定かではないが、時計などが多く売られていた。Antique LIFE JIN Ⅱの商品には、いまだに受け継がれていて、渋い振り子時計や置き時計が目につく。まだ正確に動き、古物を現代にまで運んできた時間を刻み続けているようだった。

オーストラリアの形をした灰皿。キウイやコアラの浮き彫りが微妙な感じで逆に面白い。意外にもメード・イン・ジャパンだという

 店内には、万年筆、食器やホーロー看板などなど、書ききれない商品が店を埋め尽くす。60〜80年代ぐらいの生活雑貨や小物だと神山さんは説明する。年配の客にとっては、あの頃の感情がよみがえり、思わず手に取る。面白いのは、若者たちも、現代風の部屋に自分なりの工夫を加えてインテリアとして買っていくことである。例えば、ダイヤル式の電話もその一つだ。「昨年、10代後半ぐらいの女の子が、1台購入したんです」

キセル。時代劇でよく見かけるが、昭和20年ごろでも吸ってる人は少なからずいた。
犬神家の一族にでてくる3姉妹の松子が印象的だった

 神山さんはレジカウンターから見える電話を愛おしそうに見ながら続ける。「TikTokで、発見したらしいんですが受話器の部分を改造してスピーカーとして使うって言ってました」。他にも、喫茶店の店主は、斜めの蓋(ふた)の付いた牛乳入れを郵便受けにするといって、うれしそうに買っていった。

大正から昭和にかけて、こんな丸メガネをかけている人が大勢いた。
特に学者や作家に多かった

 今でも町中華などに行くと出てくるところもあるが、飲料メーカーの会社名の入ったグラスは人気があると神山さんがうなずく。家で使ってみると、心なしか、古びてはいるがプロの作る中華料理の味に近づくような気がする。一方でしゃれた灰皿を線香立てに使ったりすると懐かしさや温かみ、重厚さなどが加わることだってあるのだ。新しいものと組み合わせて楽しむのが彼ら流らしい。

温度計といえば、木の板がつきものだった。
この形状は、多くの家で使われていたものだ