世界レトロ遺産一覧

オレンジ色の列車が運ぶ「淡い恋と旅の思い出」

日本人が尊ぶものの一つが「情」である。あらゆる場面で使われ、さまざまな意味をもつこの言葉は奥が深い。辞書によれば、「他人に対する思いやりの気持ち、情け、真心、誠意、愛情、趣、味わい」などなど意味は多彩だ。中でも、あまねく人々が好む情がある。「旅情」だ。字面は美しく響きも奇麗なこの言葉がよく似合う列車、それが「ロマンスカー」である。

電車に夕日、紫煙と珈琲 我が青春の玉突き場

 近代的なビルが立ち並ぶ大都会・東京だが、随所に時代がかった建物が並ぶ場所や通りがひょっこり顔を出すことがある。神田川に並行して走る、昌平坂交差点からJR御茶ノ水駅へと向かう外堀通りには、まさに忘れ去られたような建物が軒を連ねる。湯島聖堂寄りに静かにたたずんでいるのが、「淡路亭ビリヤード場(以下淡路亭)」だ。

令和の若人に昭和の元気と活気、情熱を届けたい

 館内に入った瞬間に伝わってくる不思議な「熱」は、まごうことなき昭和という時代が持っていたそれだ。1800年代の終わりから、1945年(昭和20)年8月15日、第二次世界大戦に負けるまで、日本は戦争に明けくれた。勝っているうちはまだ良かったが、近現代の大きなうねりの中で初めて敗戦という苦汁を飲まされた。しかし、日本人のすごさはそこから発揮されることになる。