コラム其ノ拾捌(特別編)
retroism~article276~
これまでレトロイズムでは、昭和の古き良き文化、生活、モノ、風景、建築など後世に残したい事柄を追い求めてきた。例えば、昭和のテレビ番組は、全ての国民にとって魅力がふんだんに詰まっていたメディアの筆頭だった。あらゆるジャンルの番組が制作されたが、内容的には玉石混合といった状況でもあった。いい意味でも悪い意味でも影響力が肥大化し、社会問題へと発展することすらあり、PTAを中心に「子供に見せたくない番組」のリストまで登場してしまう。その一つが、ザ・ドリフターズが出演する「8時だョ!全員集合」だった。
前回、我々は、ドリフターズの歴史を振り返る展覧会「ザ・ドリフターズ展~発掘! 5人の笑いと秘宝たち」を紹介した。そのプレスリリースを見た時、彼らこそが昭和を代表するお笑いであり、彼らの作ったコントやギャグは、時代を作ってきたといっても過言ではないことを思い知らされる。それまでは、落語や漫才などの番組も少なからずあり、多くの視聴者はそちらで笑いを楽しんでいた。しかし、「8時だョ!全員集合」を小学生の頃に見ていた人たちにとって、それは最先端であり、前衛的かつ刺激的だった。しかし同時に、彼らのコントは品位のかけらもなく、卑猥(ひわい)でお下劣だった。今のテレビではまず放送できないだろう。でも、それが許された時代こそが昭和だったとも言える。
「ザ・ドリフターズ展~発掘! 5人の笑いと秘宝たち」のオープニングには、加藤茶、高木ブーもゲストとして駆けつけた©イザワオフィス / フジテレビジョン