200本目の記事リリースにあたって

「三度の飯より車好き」「排ガスすらもいい匂い」

 「昭和レトロ」をキーワードとした物事に関わる人々の共通点は、自分の仕事を愛してやまない人たちばかりということだった。当然のように、仕事内容や扱っているプロダクト、経営する店舗にはプライドが満ちあふれていた。

 横浜にある「Vintage Car Yoshino」は、ヴィンテージカーを扱う店だが、話をしてくれた芳野正明さんは、開口一番、「三度の飯より車が好きだし、それは今でも変わらねぇ」と言った。二酸化炭素(Co2)削減に向けて、EV(電気自動車)の普及が進む現代においては、顔をしかめる人もいるかもしれないが、「排ガスすらもいい匂いだって思ってたほど」と笑った。

 「チンドン芸能社」の演奏を見たときには、無意識に興奮している自分に驚かされた。アナログ音楽の原点を見せられた気がしたからだ。今でこそ、レコード人気が盛り上がりを見せているが、これぞ生の音というものを聴かせてくれるのは、チンドン屋が唯一かもしれない。デジタルでは絶対に表現できない、心を鷲づかみにされる快感が、彼らの演奏にはあった。街の人との触れ合いも当然のように存在し、昭和の時代には、どこにでもあった風景がよみがえってくる。観客たちはみんな笑顔だ。時には、「岸壁の母」を聴いて涙ぐむ年配者もいるという。喜びや悲しみといった感情がダイレクトに伝わっているのだ。上辺だけに見えてしまうコンピューターを介した人との繋がりは、そこには皆無だ。