昭和27年頃の漁師町を再現 船宿や三軒長屋も

 長屋の人たちが使う共同トイレや水道も面白い。木製のたらいのようなものの上に、2本の木が渡してあるだけ。しかし、周囲には臭い消しとしてドクダミが植えられ、日本人の奥ゆかしさと清潔好きな国民性を垣間見ることができる。

余計なものは一切なしの共同便所。主に長屋の人たちが使用し
た。天井にぶら下がるのは、ドクダミを入れた袋。臭い消しだ

 1905(明治38)年に建てられた魚屋、豆腐屋は、堀江フラワー通りにあった豆腐屋をモデルに造られた。どんどん外国の文化が入り込み、近代化していく東京のすぐそばでは、昔ながらの人たちが力を合わせて町を形成していたのも感慨深い。たばこ屋のショーケースにあった缶ピース。実物だけに錆(さ)びた感じがまたうれしい

 「浦安には、元々あった街と、埋め立てによってできた街があります。他の埋め立て地を眺めると、住宅地として整備された土地ってそう多くはありません。古い街並みと新しい街並みの共存という意味で、浦安を『ふるさと』と思い、郷土愛を育むために一役買いたいと私たちは考えています」。袖山さんは一息ついた。「二つの街が共存していることで、たった50年、転換という意味では、10年か20年という短いスパンで変わっていった街が浦安です。今住んでいる人たちに、もっと言えば日本中の人に、昔の浦安の街はこうでしたということを知ってほしいと願っています」
2枚重なったガラス越しに見た長屋の風景

 博物館を1周すると、昭和40年代半ばまで続いた漁師町然とした街があったことを記憶の片隅に残してほしいと願わずにいられなくなる。工業化によって海が汚染される前の日本には、素晴らしい資源が豊富にあったことを忘れないためにも。

うらやすしきょうどはくぶつかん
千葉県浦安市猫実1-2-7
📞:047-305-4300
定休日:月(祝日の場合は翌日)
開館時間:午前9時半〜午後5時(入館は午後4時半まで)
入場無料

文・今村博幸 撮影・JUN