子供は風の子 「昭和の原風景」記録の終わらぬ旅

 岡本さんは少し表情を曇らせた。「魚釣りとか、チャンバラごっことか原っぱで虫を探したりしていた僕らの時代の楽しかったことが、日本全国で消えてしまうのだろうなと思い始めたんです」

 それは同時に、子供たちが外に出なくなったことを意味する。テレビが各家庭に普及し、遊び場は家の中が中心になっていく。服を汚し放題で空き地などを駆け回っていたことが懐かしく思えた。そんな光景が全国から消えつつあるのを目の当たりにして、この先どうなってしまうのだろうという危機感が芽生えたと岡本さんは言う。

実体験を通した学び。生きた魚も教材となる。福島県檜枝岐村(ひのえまたむら)で2005年

 「写真家としてそれを撮らなければ、何も残らなくなっちゃうんじゃないかと。ほとんどの子供が部屋で遊び、自然から遠ざかっている。そんな状況下、部屋から一歩出て、自然に親しみながら遊んでいる姿を記録として残したかったんです」

海水を含んだ昆布は重い! 北海道稚内市で1986年

 もう一つ子供が外に出なくなったのには理由があると岡本さんは強調する。「社会が変わったと言えばそれまでですが、家の手伝いが少なくなっていったことも原因だと思います。特に僕が育ったのは農家だったので、作業の大半は外。しかも、今ほど機械化が進んでいなかったので、子供も手伝いに駆り出されるわけです。まさに泥にまみれて子供時代を過ごしました。大変だったけど、逆に言えば田植えなどは祭りのようでもありました」

昔ながらの田植えに挑戦。なんだか楽しそう。愛知県岡崎市で1998年

 田植えをやるとなると、近所の人や親戚が、20人も30人も集まった。「農村では、晴れの日じゃないけれど、ご飯を食べたり、親戚中が集まってきて、その前の準備があるんです。きれいな田んぼに水を入れたり、火を入れて、みんなで当たって暖まったり。仕事が終わると田んぼのあぜ道でおいしいおにぎりを食べ、大人たちは酒を飲んで、そんな風景が僕には印象的に残っているんです」

公園に置かれた廃バスは人気の遊具だ。東京都大田区で1971年