昭和風情と下町情緒残る空間でクラフトビールを

 古民家の魅力に惹(ひ)かれて店に入り、谷中の名前がついたビールを飲んでほしい。「とっかかりは軽い気持ちで来ていただければと思っています。でも実際に、ご来店いただいたら、古民家とクラフトビールの共通点や、深い繋がりがあることを分かっていただけるのではないかと考えております」    店先に置いてある臼(うす)が、静かに郷愁を誘う

 ビールは、常時8種類を用意する。「谷中ビール」は、古民家の色から発想されたもの。夕日が沈むときの赤みがかった色を出した。焙煎(ばいせん)麦芽を使用しているので香ばしさが特徴。丸みがあって甘い味だ。1杯目に喉を潤すのに最適なのが「谷中ドライ」。どちらもピルスナータイプだ。「谷中ゴールデン」は、柑橘(かんきつ)系がほんのり香るラガータイプである。ホップの量を他のものと比べて3倍使った「谷中ビター」は、強調された苦味を感じつつ、柑橘系の香りも楽める。そして、「アウグスビール」は丸みがあって、料理の味を邪魔しないビールらしいビールだ。「麦とホップの割合にはこだわっています。ピルスナータイプで、外国人も好む王道のビールといえます」。あとは、アウグスのオリジナルが3種類並ぶ。黒ビールの中でも比較的後味が軽くて飲みやすい「ドライスタウト」。コリアンダーやオレンジピールが入る、小麦のビールといった味わいの「ホワイト」。さらに、インディア系ビール。ホップが他の4倍入っているので、苦いビールが好きという人はぜひ試してほしい。

細い階段を上がり、和室へ入る手前にある下駄
(げた)箱にも昭和の風情。ガラス戸も昔のままだ

 古民家は、湿気が少ないと室内の中の空気が乾くが、多いと重たい空気が流れる。それを払ってくれるのがビールの醍醐味(だいごみ)でもある。おいしいクラフトビールを片手に古民家で、まったりとする。そんなぜい沢な時間を過ごすことに価値があるのだ。畳にちゃぶ台が並ぶ2階では、正座をしてもいいし、脚を伸ばしてのんびりしてもいい。「ただいまと言っていただけるような場所になりたいですね」

泡の最後の一滴が落ちると、ビールが完成。口に運ぶ
時と飲み込んで鼻から抜ける2種類の香りを楽しみたい

 昭和の風情と下町情緒あふれる空間でクラフトビールに酔う。ここでしか味わえない至福の時間となるだろう。

東京都台東区上野櫻木2-15-6 上野桜木あたり1号棟
📞:03・5834・2381

営業時間:午前11〜午後8時(月は午前11時〜午後3時半、LOは閉店の30分前
)
定休日:不定休

https://autoreserve.com/restaurants/k8hX2bj4vK1AKUFT1Pfi

文・今村博幸 撮影・JUN