年代物のジュークボックスにも新たな命吹き込み

 手放せないレコードがあるなら、見た目にも格好いいジュークボックスを使いたくなる気持ちも理解できる。そんな人たちのために、古い機械を生き返らせるのが長岡さんの役目である。

 直せる者は誰かいないかということになり、長岡さんが手を挙げた。元々機械類が好きで、バイクや車をいじるのも好きだった長岡さんは、その仕事に魅力を感じた。「最初は見よう見まねというか手探り状態で、試行錯誤の連続でした。ただ当時のプロダクトは、ワーゲンと一緒で基礎がしっかりと作られている、まさに機械なんです。部品一つひとつが目視できますから、仕組みを辿っていくと、きちんと元に戻っていくんです。『ここがこう動いてこうなるから、ここを直せばいい』ということがだんだんわかってくるんです」

ロール紙をセットして楽しむアメリカ製の自動
演奏のピアノ。実際の音は、素晴らしいの一言

 勉強も必要だったが、アメリカのサイトや再販された当時の技術者向けの英語版サービスマニュアルなどを取り寄せ、コツコツと修理した。「最初苦労したのは、正解がわからないことでした。つまり直したつもりでも、それが正しい動きなのかがわからず動画などを探し出して情報収集しました。モーターの回転部の動きやセレクションのギヤの仕組みとかをいじるのは面白いんです。そのうち、修理すること自体が楽しくなっちゃって」

 いつの間にか、どんどん知識が蓄積されていったが、もうひとつ問題があった。「難しいのは、音響の部分でした。真空管を使ったアンプなどは、詳しい人に直し方を教えてもらったり、僕が手に負えない部分は手伝ってもらったこともあります。ただ、メカの動きとか、作ってもらったアンプを組み込んでまとめるのは、僕自身がやりました」。目を輝かせながら長岡さんが続ける。「汎用的なギヤとか、部品に関しても工場にアルミで削り出しで作ってもらったり。また、セレクトボタンや大きなデコレーションパネルに関しては、アメリカに部品屋さんがあるので、そういったところで探します。ワーゲンのパーツなどと一緒にまとめて仕入れられるので助かっています」

1963年製のシーバーグ。ひと頃の派手な外観とは打って変わって落ち着きのある面構えだ

 見事に蘇ったジュークボックスが店内に並ぶ。音楽が流れる前にも、いろいろな「音」がするところもいとおしい。お金を入れると「スッチャン」と金属的な音、指に多少力が必要な選曲ボタンを押す「ガッチャン、ガッチャン」という機械音。指令を受けたマシンがカタカタカタと盤を探してきてターンテーブルに載せる。前奏の前の「プチノイズ」を聴きながらじらされるのは、むしろ快感でさえある。

レコードを収納するリング部分。グルグルと回り、お目当ての一枚をピックアップしてくれる

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