心に染みる名フレーズ 駄菓子も扱う牛乳店⁉︎

 午後になると、学校が終わった子供たちが三々五々顔を出す。それも梅原さんにとっては生きがいだ。最初はよちよち歩きの赤ちゃんを連れて親が来る。その子たちが成長して学校に入ると、一人で来るようになる。子供たちの成長を見ているだけで楽しい気持ちになれる。「この前まで小さかったのに、子供ってすぐに大きくなるのよ。だから、『あんた大きくなったねー』ってついつい言っちゃう。そうするとね。『おばさん、私が来るとあんた小さかったのに』って毎回同じこと言うねって。そんな子供たちが結婚してまた子供連れてきたりね」。笑顔の梅原さんは、そんな成長や喜ぶ顔を直に見られるのがなによりの幸せだと満足げだ。

自転車でやってきた常連の子供たち。白いパーカーの子は、入荷を待っていた「もっちゃんだんご」を手に大喜びしていた

 やがて小学生の三人連れがやってきた。その中の一人に、梅原さんが声をかける。「あんた、『もっちゃんだんご」入ったよ」「ほんと!やったー」。早速二つ買った彼に、入荷を待っていたかどうかを尋ねると、「そう、なかなか入らなくて…大好きなんだよ」。来店の頻度を聞くと「俺は、週に2回か3回」「俺もそのくらいかな」「俺なんか、もう100回は来てる!」。他の子供が口を挟む。「こいつのいうこと信用しないほうがいいよ」。いかにも子供らしい会話が妙に新鮮だ。 

配達する牛乳を保存していた昔の冷蔵庫の前で。
 現在は、駄菓子の在庫入れへと役割を変えた   

 ワイワイと騒ぐ子供たちに梅原さんが声を荒らげる。「もうあんたたちうるさいいから帰って」。彼らは素直に、「じゃーねー」と明るく自転車で去っていった。梅原さんは、少し真面目な顔で言う。「ちょっとした悪さする子もいるんですよ。その時には、私かお客さんがきちんと叱る。彼らは素直に反省します。そんなことするなら『二度と来ちゃダメ』って言うと、しょんぼりして帰るけど、また何日かすると、ケロッとして寄ってくれる。うれしいよね」

駄菓子の種類の充実度はかなりのもの。昭和からあったモノもたくさん並ぶので、大人も十分楽しめる
 こんな場所がまだ都内に残っていること自体、奇跡だ。街の人たちが、何の気兼ねもせずに集まり、たわいのない話をして大声で笑う。「まだまだ動けるうちには続けたい、生きがいだよね」。そう言った梅原さんは、まだ69歳で意気軒高だ。あと最低20年ぐらいは同じ笑顔を見せてほしいと願う。

うめはらぎゅうにゅうてん
東京都葛飾区白鳥3-26-13
📞:03-3601-2129
営業時間:午前10時〜午後6時
定休日:年中無休(年末年始除く)

文・今村博幸 撮影・JUN

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