現役早大生もハマる 昭和アイドルの魅力とは?

 牧角さんは、小学6年生の時に、飛行機の中のMV(ミュージックビデオ)映像で目覚める。「たまたま流れていたのが、ベイ・シティ・ローラーズ。それまで音楽にはあまり興味がありませんでしたが、メロディーがすごくキャッチーでした。何より格好良かったことを覚えています」。その後、クイーンやカーペンターズへと移り、チェッカーズとか日本のアイドルも聴くようになった。「自分の性格だと思いますが、一度気に入るとドップリとハマっちゃう。音楽に関しても同じでしたね」。ベイ・シティ・ローラーズといえば、タータンチェックの衣装が一世を風靡(ふうび)した。日本でも多くの若者がまねをした。年配者にとっても印象に残っているグループだ。

 長谷川晴香さんも音楽から、昭和に興味を持った。「YouTubeで、おニャン子クラブを見て、今とは違う髪形とか当時のアイドルの雰囲気に惹(ひ)かれました。そこから次第に他のアイドルも見る感じでしたね」

おニャン子クラブの生稲晃子、工藤静香、斉藤満喜子による「うしろ髪ひかれ隊」のメンバーズカード。好きな人にはかなり垂涎(すいぜん)ものだ

 彼らの活動も興味深い。「メンバーの何人かで、時代がかったスポットを巡ったり、駄菓子屋さんを訪ねたり、喫茶店を巡ったり。特に喫茶店はよく行きます。ネットで調べることもありますが、街を歩いていて古そうなお店にふらっと入ることもあります」と牧角さんが言った後、少しだけ戸惑いがちな表情に変わった。「若い僕らからすれば、実は入るのに勇気がいるんです。ちょっと緊張します。ただ、食事をしたりコーヒーを飲む頃には落ち着いてきて、昔を生きてる人間じゃないのに、懐かしさを感じてしまうことすらあります」

現幹事長の吉武さん。肩パットの入ったジャケ
  ットを着ることもあると言う強者(つわもの)だ  

 長谷川さんが言葉をつなぐ。「私は、最初、喫茶店にはあまり行きませんでしたが、サークルに入ってからは行くようになりました。お客さんも働いている人も、年配の人が多いからかもしれませんが、のんびり過ごしている方が多くて、時間がゆったり流れていると感じると、リラックスしている自分に気が付きます。昔ながらの喫茶店って、ソファが置いてあるところが多いので余計にくつろいじゃいます」

 牧野さんも同意見だ。「ふた通りあると思うんです。最近のレトロブームの影響で、インスタなどに出てくる店は、可愛いからという理由で有名になっちゃってて、学生も多い。それはそれでいいと思いますが、どちらかといえば、常連のおじさんやおばさん、おじいちゃんやおばあちゃんがいるほうに惹かれます。その雰囲気が好きなんです」。喫茶店に関しては、空間に漂う古い雰囲気に、興味を持つようだ。「昔そのもの」が好きと言うのは吉武さんだ。「実際に当時の若者がが座ってお茶を飲んでいたのを想像するのが楽しい。その頃にタイムスリップした気分になれるのが楽しいんです」

「レトロと呼びたいのは、やはり昭和です。特に1960〜70
   年代にこだわりたいですね」と言う初代幹事長の牧野さん

 自分たちの両親から上の世代が熱狂したものに、輝きを見い出すのはなぜだろう。牧野さんの意見はこうだ。「最初に『昭和レトロ』というサークル名をつけちゃったのですが、私自身は80年以降はちょっと違うかなと思っています。例えば、「ALWAYS三丁目の夕日」とか、ホーロー看板だとか、手書きのポスターだったりとか、高度経済成長の時代に存在した世界観こそが、私の中に強くあるレトロのイメージなんです。86年に始まった『バブル景気』に象徴されるように、80年代以降は高度経済成長期とは別の種類の活気や華やかさが感じられます。故に同じ『昭和レトロ』と一括りにしていいのかという疑念に駆られていました

 そこで、「アナログ」と言う言葉を提起してみると、若者らしい独自の意見が返ってきた。「昭和のプロダクト(製品)に対しては、確かに『人の手で作られた』アナログのイメージはありますよね」と言う牧角さんは、未来を含めて考えている。「アナログっていうのは、一つのキーワードではあると思いますが、僕自身定義があいまいなところが正直あります。平成レトロという言葉が最近出てきていますが、世代が進むにつれて、いい悪いは別にして、定義は少しずつずれていくと思います。僕としては、昭和という言葉がつくと、独特のすごみが出てくる感じはします」

 牧角さんは、ベイ・シティ・ローラーズがきっかけ
で、昔の音楽を聴き出したが、「彼らの着て いた
 タータンチェックは、今考えるとちょっと……」