旅好きの遊牧民が集うユニークな専門書店

 旅は、懐古的な見方や考え方とも親和性があると川田さんは言う。「作家の旅行記を見れば、昭和ってこんな感じで旅行してたよねって懐かしくなる。昔のエッセーや旅行記は絶版になってるものもあって、探すのも一苦労です。当店ならある可能性があると思って来るお客様も少なからずいらっしゃいますよ」。見たことのない風景や昔の旅行のスタイルを読みたい人をも満足させる。絶版の旅行記や旅行に関する資料は古本でしか見ることができないのだ。あらゆる事象と心象の移り変わりを残す役割も果たしているのである。

アジア各地の弁当のイラスト集が弁当箱に入っている。箸(はし)がついていてセンスもいい

 国内なら、昭和の風景に出合うために旅に出るのはごく普通だし、昔ながらの喫茶店や商店を目指す旅もある。「つまり、郷愁を感じる昔あったモノを探しに当店に来てくれる人がいらっしゃる。とてもうれしいことだと思います」。そういうタイプの旅を求める人は増えていると思うと川田さんはうなずく。「少し前なら、こんなの時代遅れでしょうなどと敬遠されていた店に新鮮味を感じたり、残された香りを探してたどり着いたのが外国というパターンもあります。その情報を当店で探してもらえればうれしいですね」

店名の「のまど」は、遊牧民の意。ひらがなだと優しい感じがする。店のテーマとも合っていて川田さんも気に入っているそうだ

 最後まで物静かに話す川田さんの旅と本に対する熱を気持ちよく浴びながら、新しい発見に出合える書店である。

たびのほんや のまど
東京都杉並区西荻北3-12-10
📞:03-5310-2627
営業時間:午後1時〜午後8時(日・祝午後7時)
定休日:水

文・今村博幸 撮影・JUN

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