旅好きの遊牧民が集うユニークな専門書店

 棚の作り方もユニークで、川田さんの説明を聞くと目からウロコが落ちる。基本的には、国ごと、作家ごとに分けてあり、例えば、インドの棚には、ヒンズー教やカレーのレシピ本などが並ぶ。棚を上から下まで眺めていくと、その国の特徴が見えてくるから面白い。しかもそれぞれが旅と結びついて、手に取ればインドに対するイメージが、あらゆる方向へと広がっていくのだ。「それぞれの人が興味のある地域なり国なりの文化的な事柄や建築など、ガイドブックよりも少し深いもの、あるいはそれらの本には載ってない魅力を探す人が来店している感じです」

写真家が出版した書籍をどうしても撮りたかった弊社カメラマンの魂が垣間見える一枚。古本を含め人の心を揺さぶる力がここの棚にはたくさん詰まっている

 一般的な本屋のイメージとは違う風が、小さな店の中に吹いている。「旅の本屋」と書かれているにもかかわらず、旅行にそれほど興味がない人でも楽しめてしまう「のまど」の魔力に知らず知らずのうちに引きずり込まれていく。スポーツや音楽、料理など各国の文化的な情報から旅という発想へと導かれていくのは快感ですらある。

お気に入りの本を手にする川田さん。向かって右
は作家・宮内勝典(かつすけ)氏の著作。宮内氏
は、自分の本をのまどのネット販売で見つけて購
入した。左は写真家・藤原新也氏 の出世作。学生
だった川田さんをインドへ向かわせた本だ  

  
 新刊と古本が隣同士で並んで置いてあるところも面白い。同じタイトルでも、新たに出された本と古本では、微妙に中身が違っている。だから、同じ事柄が記述されていたとしても、少し前はこう考えられていたが、今はまた違う見方がされているなどの発見もある。ここでも旅の計画から帰宅までに過ぎていくのと似た時間が流れ、変化する事柄を目の当たりにすることになる。
「『旅』を軸にして、そこから派生したものを何でも並べていく。並べ方は、僕の感覚で厳密な基準はないんです」

ぐしゃっと小箱に入れられた売上スリップ(カード)。ちょっと見ると何かのオブジェのようだ

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