「古いが新しい」カメラと写真の情報発信基地

 そんな面白さをSNS(ネット交流サービス)などで発信し、フィルムカメラの人気がジワジワと上がってきたと丸山さんは分析する。「何といっても、写真の原点は、露出やシャッタースピードを自分で決めて、切りとった画像がフィルムに焼き付けられる。この一連の流れにつきますから」。話を聞きながらふと気がつくと、店内には、人の気配がきちんとありながら、落ち着いた静けさがフロア全体を覆っていた。

国産ミノルタの「X–1モーター」。生産台数が少なかったため、中古カメラ店にも滅多に並ばない機種が2台あった。(レトロイズムの)JUNカメラマンもびっくり

 「デジタルカメラ自体を決して否定はしませんが、カメラ本体も出来上がる写真も、そんなに大きな違いが出にくいんです。性能自体が上がってますから、誰が撮っても奇麗に写ります。でも、個性というところではやはり古いカメラにはかなわないところがあるし、その違いが醍醐味(だいごみ)でもあるんです」。撮り直しができないフィルムカメラには、他では味わえないスリルもある。「失敗したくないから、一瞬の勝負。特に最近は、フィルム代が上がってるから、無駄にしたくないですよね。結果、一枚一枚を大切に撮ることになります」。丸山さんは、少しだけ真剣なまなざしになった。「風景を撮るのにもどうしても時間をかけちゃうし、スナップも一瞬を逃したくないから神経を研ぎ澄ませる。気軽じゃないところにむしろのめり込むんじゃないでしょうか。出来上がりが自分の思い通りになったときの快感はフィルムカメラでしか味わえないと思います」

中古品の買取、修理部門。あえて作業が見えるようにしているのも、良心的かつ自信の表れだろう

 北村写真機店では、修理にも力を入れている。「カメラ好きは、カメラが自分の体の一部に近いんです。少なくとも僕はそう感じます。だから直して大切にするのはあたりまえ。実際に、電池を使わないカメラなら、オーバーホールすればかなりの確率で直る。ライカはほぼ修理可能です。そして、もし自分が使わなくなっても、きちんと整備されたものを誰かが使ってくれたら、それはそれでまたうれしい。カメラに対する思いが受け継がれていくからだと思います」。自分が大事に使ってきたものだから、壊れたからって簡単には捨てられない。元に戻せるものなら戻したい。カメラという小さな機械には、そんな思いを人に抱かせる独特の箱なのである。

3階にあるスターバックスコーヒー横にあるテーブル席で、写真集などを見ながらくつろげる。「今までの量販店のイメージとは違う店づくりを目指しました」と丸山さん