レトロ建築探訪其ノ壱

あとがき

 全国どこの街を歩いていても、景色がさほどかわらない今の日本。同じような建物、全国展開している大型店舗や飲食チェーン、コンビニなど、その街「らしさ」が消えていくのは寂しい。東京でも同じことは起こっている。しかしである。たまたま見かけた建築物に、思わず足を止めてしまうこともまだまだある。昭和に建てられた建造物が現役で頑張っているのだ。

 日本における現代建築は、大きく二つの時期に分けられる。明治維新から第二次世界大戦前と、戦後から現在までである。大正から昭和前半、文明開花以来、日本は近代化を目指して、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカなどの西洋建築を盛んに模倣し始めた。キーワードは、19世紀に発明され20世紀完成を見た「鉄、コンクリート、ガラス」である。それぞれが、機能主義的、合理主義的な近代建築の重要な要素だった。そんな建築史を背景に日本人ならではの美学を取り入れたモダンなスタイルの建物が出来上がっていった。特に戦後の建物には、元気を取り戻しつつあった頃から高度経済成長期のイケイケになった頃までの熱が、いまでも鮮やかに放たれている。

 不思議なのは、建物だけを見ると多くの時間が過ぎ去っていった感じが確かにあるのに、存在自体に違和感がほとんど感じられないことだ。自然に街と一体化している。それは、昭和の建物が、キラリと光る魅力をまだまだ失っていないからである。

文・今村博幸 撮影・JUN

  

 

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