魅力のひとつはアナログ感満点な容姿だ。一昔前の機械が持っている姿と言い換えてもいい。ラジオ局選択用の大きめのダイヤル。カセットテープを操作する指で押し込むタイプの早送りやプレイボタンも「機械」そのものだ。それらを操る人の動作、例えば、イジェクトボタンを押すと、カセットテープが収まっているカセットドアが斜めにパカッと開く。再生時に「ガッチャン」とプレイボタンを押す動作などなど、機械を扱っている感覚は、自然と気分を高揚させた。
店に並ぶラジカセをじっくり眺めると、デザインや機能を争った各メーカーのプライドが透けて見える
「最近でも、みんなで音楽を聴いている状況を映像や画像で見せたいときにラジカセが使われることがあります。再生装置とそれで音楽を聴くことを表すアイコンになっている部分があると思うんです」ラジカセを置くだけで、「みんなで音楽を聞いている感じ」が画面から醸し出されるのだ。
カセットにはありがたみがあると浅田さんは言う。最近の20代、特に女性はカセットテープの形状を「かわいい」と表現する。「なんだかんだ言って、みなさん形あるモノが好きなんですよ」
渋谷公園通りの裏、ヴィンテージマンションの一室に同店はある
アナログな機器や道具には、実存感がプンプンと香る。「アナログとは?」の問いに浅田さんが答えた。「お金と場所を食います。今となってはぜいたく品じゃないでしょうか」
帰り際、「昭和の遺産」がまぶしく映った。
だびーまっど 東京都渋谷区神南1-14-1 コーポナポリ203
03・5941・6242
営業時間:午後2時〜同7時
定休日:不定休
文・今村博幸 撮影・JUN