昭和文化の名脇役・たばこに想い馳せ

 中条きよしの「うそ」においては、たばこの向こう側に見えてくる物語は広大だ。折れた吸い殻によって男のうそがバレる。女性の勘の良さのなせる技とも言えるが、いずれにしても、そのワンフレーズで聴く者は、歌の世界へと引きずり込まれていく名曲である。身勝手な男を、女がよく観察している。そうでなければ折れたたばこの吸殻でうそを見抜くのは難しいだろう。同時に女は、言うまでもなく、この男を深く愛していることを示唆している。もっともこれには、ネタがあって、「あるホステスが彼氏の家に行ったら、口紅がついたたばこの吸い殻があった」という実話が元になっているらしい。

 もっと直接的なのは、ダウンタウン・ブギウギ・バンドの名曲「スモーキン・ブギ」である。なんと言っても、サビの部分が極めてリアル。「目覚めの一服、食後の一服、授業をサボって喫茶店で一服、風呂入って一服、クソして一服……」。そのまんま感は否めないが、愛煙家は「その通り!」と叫んでしまい、メロディーとともに聞くと、妙な実存感があった。彼らのツナギというスタイルも印象的だった。他にも、沢田研二が「憎みきれないろくでなし」で喫煙パフォーマンスがあったり、ヴァン・ヘイレンや、エリック・クラプトンも演奏中に(ライブでのLayla(邦題・愛しのレイラ)だったと思う)たばこをギターのヘッドに挟んで演奏する姿が、ひどく格好良く見えたりもした。

世界のどこへ行っても、たばこが持つ文化的意義は共通だ

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