令和に訪れたい昭和の文化漂う胸キュン喫茶店

 喫茶店を構成する重要な要素の一つが音楽だ。かつて渋谷の東急ハンズの脇に、「ヘッドパワー」という喫茶店があった。夜は酒も飲める店だった。靴を脱いで上がる広い店で、片隅に設けられたステージでは主に生ギター1本での生演奏が繰り広げられていた。コーヒーが特別うまいわけではなかったが、多くの若者が友達や恋人と連れ立ってコーヒーを飲み生演奏を聴いた。その頃まだ無名だった南佳孝がステージに上がることもあった。ピックが弦を弾く音や指が弦と擦れる音がダイレクトに聞こえる貴重な場所だった。まさに音楽という文化で満たされた空間である。

 また音楽がらみで、ぜひ記しておきたいのが東京・神泉にある「B.Y.G.」だ。現存しているが夜だけの営業。かつては昼からコーヒーやビールが飲めた。一日中流れていたのは、いわゆるアメリカンロック。客は、カントリーをベースに都会的なサウンドでヒット曲を量産していたイーグルスを聴き、ザ・バンドの泥臭い演奏に酔いしれ、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの美しいハーモニーに耳を傾けた。地下にバンド練習用の安いスタジオが併設されていた。金のない学生にとって、ありがたいスタジオには、フェンダーのアンプなど、かなり充実した機材を使って練習ができる穴場だった。 

レスポアールにあるレコードプレーヤーは未だ現役でイージーリスニングを流している

 レコードも、喫茶店文化の一つと言っていいだろう。横浜にその名を轟かせた「ちぐさ」は、ジャズ喫茶の先駆けであり、渡辺貞夫をはじめ、多くのミュージシャンが通ったことでも有名だ。少しばかり懐かしい呼び名である名曲喫茶「ライオン」(東京・渋谷)も健在だ。深みのある音で流れるクラシック音楽がファンを惹きつけてやまない。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする