古典が現代に蘇る装丁に酔いしれる サロンの顔も

 集う人たちは緩やかに繋がりながら、活動と会話を通じて知性を磨いていく。年齢や性別に関係なく、今いるコミュニティーと全く違う場所にいる人と出会う場所が、あおば堂なのだ。「特に若い方とお話しできるのは、すごく刺激になりますよ」。読書会があり、英書講読講座では、一般教養や雑学を学び、コントラクトブリッジ、健康麻雀、マスキングテープやペーパーナプキンを使っての手芸部、水彩画や革製の小物などを作る教室も開かれるなど、その内容は多彩だ。

   「本が並んでいる真ん中のテーブルが、教室になります」。なんとも素朴だが、魅力あふれるこの小さな空間では、講師を招いて製本講座も開かれる。「お気に入りの文庫本の表紙を自分の好みに作り変えます。材料は好みの布や手ぬぐい、紙などです」。本を読むワクワク感に、製本する楽しさを加えるとは、聞いているだけで楽しそうではないか。

「吾輩は猫である」の初版は3分冊。橋口五葉は、日本の華美な装丁の先駆けでもあった。ページはフランス式のアンカット本

 青木さんは、もともと本が好きだった。小学生の時には読書クラブ、高校では図書部に入っていた。大学生、社会人となってからは、通学・通勤の時に読む程度になり、結婚してからは、読書量は激減した。本との関わりは少しずつ希薄になっていった。

 ところが、速読をはじめると、改めて本への興味が再燃する。「子供の頃にお祭りでヒヨコが欲しいと言った私に、『本を買ってあげるから我慢しなさい』という親が言ったセリフをいまだに覚えています。つまり、やっぱり私は本は好きだったんですよね」

オープンは2016年12月8日。「ジョン・レノンの命日です」と青木さん

 古本屋を始め、それと並行する活動の中で、自分の中に眠っていた過去が蘇(よみがえ)る。青木さんの古本屋が教えてくれるのは、古き事柄から新しきを知り、さらに発展させていくことの楽しさ、と言えるのではないだろうか。

あおばどう
東京都台東区上野桜木1-10-17ITerrace上野桜木101
📞090-6940-2401
営業時間:午後2時〜同4時(平日)、午前11時〜午後4時(日曜、祝日)
定休日:月曜、水曜、土曜
(新型コロナウイルス感染拡大で5月16日まで臨時休業)
aobadou.sakuragi@gmail.com
https://aobadou.sakura.ne.jp/
文・今村博幸 撮影・岡本央

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