江ノ電をBGMに古民家で良質なアンティークを

 苦笑いをした吉川さんが続ける。「時代を経た建物の中で、時代を経たモノを商う。ある種の理想を見た思いがしました」。建物自体、存在しているのが不思議なくらいだ。いろいろと話を聞くと、建てられたのは、幕末期ぐらいだという。ごく普通の庶民が住んでいた民家は、関東大震災をはじめ、自然災害にたくましくも耐え抜いて、今に残っている奇跡の家である。


店主の吉川さんが、縁側の前に置かれた縁台でゆっくりと穏やかに話す

 R−OLD FURNITUREが扱う骨董は時代もジャンルも幅広い。室町時代から戦後ぐらいまでの古い焼き物、ガラス製品、家具、掛け軸、絵画、漆工芸品など、吉川さんがクールと感じる商品がセレクトしてある。「古いものには、過去の人たちが使っていたことで生まれる『丸み』があります。焼き物もそうですけど、少しずつですけど丸くなっている。石が時間をかけて転がり、丸くなっていくようにね」。吉川さんの言葉を遮るように、江ノ電が、ガタンゴトンという音とともに通り過ぎていった。「人が作ろうとして作ったものには作為的な感じが付きまといます。でも、時間を経て丸くなったものには、それがありません。人の力では絶対に作れない何かが、タンスにしろ、焼き物にしろ加わるんです。そこが骨董品の最大の魅力だと思います」。使った人の思いがしっかりとしみ込んでいて、醸し出されることは言うまでもない。


ロッキングチェアに揺られて時間を過ごすのも悪くない。思わず欲しくなる逸品だ

 吉川さんは、「古物を扱う仕事は奥が深い」と言う。「一つひとつの品物に出合うたびに、新しいことを教えられるのが、この仕事の面白さです。古いのに、いや古いものだからこそ、いくらでも新しい発見があるんです。何が出てくるかわからない。歴史も含めて、掘れば掘るだけ驚きがあります。魅力的な世界ですよ」と吉川さんはほほえんだ。「当店のコンセプトは、まず捨てられてしまうものを救出すること。エコにもなると考えているからです。だから、身の周りを見渡して要らないと思った道具などを、捨てる前に、ぜひここに売りにきていただきたい。そして、別のお客様に買っていただいて、自分なりのセンスで格好良く、クールに使ってほしいのです」


江ノ電の線路のすぐ脇に店がある。家具を買いに行ったら、電車の走る音を聞きながら、ゆっくりと商品を選びたい

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