「男はつらいよ」の全てが集結 寅さんに再会も⁉︎

 随所にある仕掛けも楽しい。昭和30年代の帝釈天の参道を再現したコーナーのジオラマの所々に筒を設置して、耳を当てると竹ざお屋の声や花火の音など、町に流れていた音が聴ける。タコ社長の印刷工場では、インクの匂いが出る装置まで備えた。全ての原点には、松竹と山田監督の強い思いがある。「3年に一度リニューアルします。その度に、コンセプトを相談し、実際に作ってみて、『こうしたほうがいい』となどと試行錯誤を繰り返し、どう見せるかを考えています。山田監督も、映画を作るような気持ちで関わっていただいていると思いますよ」

鉛の活字も印刷工場で使っていた本物。かつては、一つひとつ手作業で文字を組んでいた

 男はつらいよの魅力は、話の面白さにもあるが、日本の原風景があるところだと、井上さんは言う。「原風景は、実際に目に見える部分もあります。同時に、言動がわりとめちゃくちゃな寅さんなのに、そういう人を拒否しない温かさみたいなものが、昭和のメンタリティーとしてあったと思うんです。男はつらいよの魅力は、そんなことが映画からにじみ出ているところではないでしょうか。もっと言うと、日本人の心の原点があるのかなと思いますね」。それらを改めて感じられるのが、この寅さん記念館なのだ。


江戸川のほとりに寅さん記念館はある。入り口の「TORAsan cafe」や土産コーナー、山田洋次ミュージアムも併設する

「施設の名称が寅さん記念館なので、映画はあまり詳しくないと言って、来るのをためらう人もいると思うんです。でも、昭和の懐かしい風景や昔の暮らしが見られるのもここの魅力だと自負しています。だから寅さんを知らない人でも、ちゅうちょせずに足を運んでいただきたいですね」

 寅さんが口にした数々の名台詞(ぜりふ)は、映像とともに我々の心に刻まれている。

とらさんきねんかん
東京都葛飾区柴又6-22-19
📞03-3657-3455
営業時間:午前9時〜午後5時
定休日:第3火曜(祝日の場合は水曜) 12月第3火曜、水曜、木曜
入館料:一般500円 児童・生徒300円 シルバー400円
団体(一般)400円 団体(児童・生徒)200円
http://www.katsushika-kanko.com/tora/
文・今村博幸 撮影・岡本央

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コメント

  1. 西村公志 より:

    寅さんの新作見に行きました。映画館のスクリーンに男はつらいよと文字が浮かんだ時、何故だか涙が出てきてしまって。。辛いとき苦しいときいつも「男はつらいよ」のDVDを繰り返し見ながら元気をもらって目の前の現実と戦ってきと気がします。寅さん記念館是非行ってみたいと思います。

    • SHIN より:

      レトロイズム〜retroism visiting old, learn new〜をご愛読いただきありがとうございます。
      私も「男はつらいよ」シリーズの寅さんのセリフからいろいろなことを学びました。
      ぜひ寅さん記念館に行ってみてください。