ココロ躍る憧れの昭和を体感できる喫茶店

 店主の叔母さんの存在も大きかった。「私が買ったものもありますが、物持ちの良い叔母がいて、彼女からもらったものも結構あるんです。女性自身やアンアン、ノンノなども彼女が残していて、店でも読めるようにしました。物持ちがいい人が多かったのも昭和の特徴ですかね」と笑う長谷沢さんのコレクションの凄さは、大きなものから細部にわたっていることだ。数え上げるときりがない。大物では、冷蔵庫や洗濯機は件(くだん)の叔母さんの家にあったもの。ソファや食器棚なども昭和の香りがする。感心させられるのが小物だ。例えば、居間の隅に置いてあったカラフルなマガジンラック、回転式チャンネルのブラウン管テレビ、食器棚の下の棚には麹町の老舗「泉屋」のティン缶製の箱にがさりげなく置いてある。母親が領収書などを入れていた記憶がある方もおいでだろう。

店主の長谷沢貴世子さん。少女漫画に出てきたような喫茶店が開きたいと言う夢をかなえた

 それらが見られるのは、狭くて急な木造の階段を上がった2階だ。40代や50代なら、「これ家にあった! あった!」と叫びたくなる品々のオンパレードだ。「子供の頃って、憧れがいっぱいあったと思うんですよ。私の場合には、明治チェリーチョコレート。奥村チヨさんのCMとか見たら、欲しくなったけど買ってもらえませんでした。子供にとっては禁断のお菓子。のぞいてみたい大人の世界でした」

年配の人向けの洋服などを売る店の後を借りた。木造トタン張りの昭和の住宅がそのまま使われている

 昔を思い出すように、視線を上に向けた長谷沢さんは最後に、説得力のあるせりふを、こともなげに口にした。「大人になった今が昭和だったら、楽しいだろうなって思うことがありますね」

 長谷沢さんの話とセピアの店内は、昭和が「輝いていた時代であった」ことを再発見させてくれる空間だ。

きっさせぴあ
東京都葛飾区柴又7-4-11
📞03-6657-8620
営業時間:午前11時〜午後5時半
定休日:火曜、水曜
文・今村博幸 撮影・岡本央

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