絶品の蕎麦と昭和な絶景に舌鼓を打つ

 外を向いて座ると、雪見障子の向こうに縁側(廊下)と庭が見える。昭和の日本家屋にごく当たり前にあった風景だ。「当時のままで残っているのが自慢。昔の建具は手作りだから、風合いがあっていいよね」しみじみと言った池田さんが、改めて障子や欄間、庭などを見回した。ガラス戸の向こうに見える庭には大きなコイがゆうゆうと泳ぎ、池に注ぐ水の音がする。

庭の池には錦鯉(にしきごい)が泳ぐ。灯篭から流れる水音が心地よい

 「高級な料亭にいけば、味わえるかもしれないけど、手軽な価格帯でなかなかこういうところはないと思うんだよ。やっぱり日本人として、忘れちゃいけない景色だと思う。気が休まるよね。日本人の心の原点だね。それを提供するのが食べ物屋の使命だし、社会貢献にもなると思ってるよ」。食はただ単に腹を満たすためだけにあるのではない。「遊び」でもある。そんな心が残っている蕎麦屋は、今となってはそうないだろう。

入り口には、旧東海道と書かれた石の標識。2階の木製の手すりが懐かしい

 話が途切れると、池田さんは自分の店の座敷を改めて見回して、「こういうのって、やっぱり良いよねえ」と満面の笑顔でつぶやいた。

そばかいせき たちあいがわ よしだや
東京都品川区東大井2-15-13
📞03-3763-5903
営業時間:(平日)午前11時30分〜午後2時 午後5時30分〜同8時15分L.O.
(土曜)午前11時〜午後8時15分L.O. (日曜)午前11時〜午後8時L.O.
定休日:火曜
https://www.soba-yoshidaya.com/

文・今村博幸 撮影・岡本央

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